かつて工場や倉庫、体育館などで広く使われてきた水銀灯ですが、2021年から製造や輸出入が禁止され、交換用ランプの入手も難しくなりつつあります。このような流れから今後の照明維持には、LEDへの交換が不可欠です。
本記事では、水銀灯の規制動向を踏まえた上で、交換対象となる照明の特徴やLED化のメリットとデメリット、そして工事の注意点や費用相場についてわかりやすく解説します。
水銀灯からLEDへの交換について悩んでいる方は、ぜひ参考にしながら進めてみてください。
水銀灯の規制動向について

水銀灯の製造・輸出入は、2021年1月1日より全面的に禁止されました。これは、環境と人体への有害性が強い水銀を規制するため、2013年に国際的に採択された「水銀に関する水俣条約」に基づくものです。
日本では2020年末をもって一般照明用の高圧水銀ランプの製造と流通が終了し、2021年から正式に規制が施行されています。
この規制により、既存の水銀灯は使用自体こそ禁止されていないものの、ランプが切れた際の交換が困難になっており、事実上、使用継続が難しい状況です。
メタルハライドランプや高圧ナトリウムランプなど一部の照明器具は規制対象外ですが、将来的にはLEDへの移行が避けられない流れになっています。
このようなことから水銀灯を使用し続けることのリスクは高く、エネルギー効率や環境対応を高めるためにも、早期のLED照明への切り替えが必要になってきます。
交換対象となる水銀灯の特徴

水銀灯は、高天井や広範囲の照明が必要な施設に多く導入されてきた高出力ランプで、特に工場・倉庫・体育館・屋外灯などで使用されてきました。
しかし、これらの照明の多くが「一般照明用高圧水銀ランプ」に該当し、水俣条約の規制対象となっています。すでに製造・輸出入が禁止されているため、今後ランプの交換や保守が難しくなってきます。
対象となる水銀灯は、器具のラベルや型番に「H400」「水銀ランプ」「高圧水銀灯」などの表記があるもので、専用の安定器を用いて点灯するタイプが一般的です。特に導入から10年以上が経過している器具は劣化も進んでおり、安全面でも早期の交換が求められています。
LEDへの切り替えを検討する際は、単にランプを差し替えるだけで済まないケースもあるため、器具の構造や設置環境も含めた確認が必要です。照明の性能を維持しつつ、省エネやメンテナンス性を高めるためには、交換対象の水銀灯の特性を正しく理解することが重要です。
LEDに交換するメリットとは

水銀灯からLEDに交換するメリットは、大きく分けて下記の3つがあげられます。
電力消費が大幅に抑えられる
LED照明の魅力は、他の照明にはない省エネルギー性があげられます。従来の水銀灯と比べて使用電力を大きく削減でき、同等の明るさを確保しながら電気代を年間数万円単位で抑えることが可能になります。
水銀灯では安定器による余計な電力も必要でしたが、LEDはそれが不要なため、必要最小限の電力で十分な明るさを発揮できます。
このように、環境負荷を軽減しながらコストダウンも実現できるので、大きなメリットと言えます。
交換頻度が少なく長寿命
LEDは点灯時間の長さにも優れており、寿命は4万時間以上が一般的です。これは水銀灯の約数倍の長さで、設置後に何度も交換する必要がありません。
特に高い場所に設置されている工場や倉庫の照明は、交換のたびに足場や高所作業車が必要になることもあり、多くの費用と手間がかかります。LED照明は長寿命のため、こうした高所でのメンテナンス頻度が減り、結果として維持コストの削減につながります。
さらに、交換作業に伴う業務の中断や安全管理の負担も減らせるため、作業効率や労働環境の改善につながる点も、LED照明のメリットと言えます。
空間に優しく快適な照明環境を実現
LEDは点灯直後から必要な明るさになるまでの時間がかからないため、即時点灯が求められる環境にも最適です。
また、紫外線の放出量が少ないため、虫が集まりにくく、照明の周囲が清潔に保たれやすいという特徴もあります。
加えて、発熱量も水銀灯に比べて少ないため、照明による室温上昇を抑えることができ、空調効率の向上にもつながります。
その他にも、LEDは点滅による劣化が少ないため、人感センサーやタイマーと組み合わせた節電運用にも最適です。防犯灯や夜間の屋外照明など、さまざまな用途で信頼性の高い運用が期待できます。
LEDに交換するデメリットとは

LED照明は水銀灯に比べて幅広いメリットがありますが、交換においてはデメリットとなる部分も複数あげられます。下記では具体的なデメリットを3つあげているので参考にしてください。
初期費用が高くなりがち
LED照明は長期的に見るとコストが安くなるメリットがありますが、導入時の初期費用は水銀灯より高額になることが多いです。
特に照明器具ごとの交換が必要な場合や、数十台以上をまとめて導入する場合には、一時的な投資額が大きくなります。
導入のハードルとなるケースもありますが、現在であれば補助金を活用できるため、申請することで負担を軽減できる可能性もあります。
既存設備との相性問題がある
LED照明を交換する際には、古い水銀灯用の器具をそのまま利用できるとは限らず、LED照明との互換性が問題になることがあります。
中には安定器を取り外さないと正常に動作しない製品や、専用の器具が必要なタイプもあります。
互換型のLEDランプを選ぶ際にも、事前の現場調査や配線確認が不可欠です。誤った選定は、ちらつきや故障の原因になることもあるため注意が必要です。
照明特性の違いにより違和感が出ることも
LEDと水銀灯では発光の広がり方や色味、明るさの感じ方が異なるため、交換後に「暗く感じる」「色が冷たく感じる」といった違和感を覚えることがあります。
これは照度だけでなく光の拡散範囲や色温度の違いによるもので、特に作業環境に影響を与える現場では注意が必要になります。
導入後に違和感が出てからでは遅いので、導入前に照明シミュレーションやサンプル設置を行い、このようなギャップを事前に防ぐことが大切です。
工事の費用相場

水銀灯からLED照明への交換は、長期的な電気代削減やメンテナンス負担の軽減といったメリットがありますが、初期費用や工事内容が気になる方も多いでしょう。以下に、工事の種類ごとの費用相場と特徴をまとめました。
あくまでも参考程度となりますが、どのくらいの費用がかかるのか相場を知りたい方は参考にしてください。
交換工事の種類と費用相場
工事内容 | 概要 | 費用相場(1台あたり) | 特徴 |
照明器具全体の交換 | 既存の水銀灯器具を取り外し、LED照明器具を新設する工事。 | 約30,000〜50,000円 | 高所作業や配線工事が必要な場合が多く、工事費が高め。明るさや配光の最適化が可能。 |
安定器のバイパス工事 | 既存の照明器具を活用し、安定器を無効化してLEDランプを設置する工事。 | 約15,000〜30,000円 | 工事費を抑えつつLED化が可能。ただし、器具の状態や互換性の確認が必要。 |
バラストレス水銀ランプの交換 | 安定器不要のバラストレス水銀ランプを使用している場合、ランプのみをLEDに交換。 | 約5,000〜15,000円 | 工事不要でランプ交換のみ。主に屋外看板照明などで使用されている。 |
※費用はあくまでも目安であり、業者によって異なる。
交換工事の際に注意したいポイント

LED照明への交換工事の際に注意したいポイントは、大きく分けて3つあります。交換工事で失敗しないためにも必ず注意点をチェックしてください。
現場環境に適したLED機種を選定する
LED照明にはさまざまな種類があり、設置場所の条件によって最適な機種は異なります。
例えば、高温多湿な場所や粉じんの多い環境、屋外などでは、防塵・防水性能の高い製品を選ぶ必要があります。
また、明るさの確保には照度計算が欠かせません。水銀灯とLEDでは光の広がり方や色温度が異なるため、事前に照明シミュレーションを行うことで「思ったより暗い」といったトラブルを防ぐことができます。
安定器の処理と配線確認を怠らない
水銀灯は安定器を通じて電力を調整する構造のため、LED照明に交換する際にはこの安定器をどう処理するかが重要です。LEDには安定器が不要なため、多くのケースでは安定器を無効化する「バイパス工事」や器具自体の交換が必要となります。
古い配線が劣化していると安全面で問題が生じる可能性もあるため、施工前には電気工事士による点検と配線の適合性確認が欠かせません。
信頼できる施工業者の選定と費用の把握
LED化には電気工事が伴うため、施工には電気工事士の資格を持つ業者に依頼する必要があります。
照明器具の選定から現場調査、施工、アフターサポートまで一貫して対応してくれる業者を選ぶことが、工事後のトラブル回避につながります。
また、工事費は1台あたり1.5万~5万円と幅がありますので、複数社に見積もりを取り、内容や保証の有無を比較することが大切です。補助金の対象となるケースもあるため、安く抑えたい場合には導入前に制度を確認するようにしましょう。
まとめ
水銀灯の規制により、今後はLEDへの切り替えが不可避となっています。LED化は省エネ・長寿命・快適性など多くのメリットがある一方で、初期費用や工事内容には注意が必要です。
費用相場や注意点を理解した上で、信頼できる業者に相談し、計画的な導入を進めるようにしましょう。
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