ビルの設備更新や設備投資を行う際、コストの負担が大きな課題となっている企業も多いのではないでしょうか。しかし、補助金を活用することで、初期費用を抑えつつ、省エネやカーボンニュートラルを推進することが可能です。
本記事では、ビルの設備更新や設備投資に使える具体的な補助金情報を紹介するとともに、申請する際の注意点についても解説します。できる限り低コストで設備投資を行いたい企業にとっておすすめの内容となっているので、ぜひ参考にしてください。
設備更新・設備投資に使える補助金まとめ
国や地方自治体では、設備更新や設備投資に使える補助金を数多く取り扱っています。今回紹介する内容は東京都が中心となっていますが、それぞれの地方自治体でも設備投資に使える補助金を取り扱っている可能性がありますので、地方自治体の公式サイトなどで調べながら、対応している補助金を探してみてください。
下記の見出しからは、具体的な補助金についてまとめていますので、申請を検討している企業は参考にしてください。
ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業

公式サイト:クール・ネット東京
「ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業」は、東京都が企業のビルや工場のエネルギー消費を減らし、CO₂の排出を抑えるために提供する支援制度のことです。
その名の通り省エネ設備の導入や、エネルギーの使い方を見直す際に発生する費用の一部を支援してくれる補助金となっておりますので、コストを抑えながら省エネ設備を導入したいと考えている企業や、運用改善を検討している企業におすすめです。
また、省エネ設備の導入ができることで、企業はコストを抑えて導入できるだけでなく、光熱費を削減しながら環境負荷を減らすことができるため、企業にとって幅広いメリットがある補助金と言えるでしょう。
「ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業」の詳しい補助内容については、下記の見出しで紹介しているので参考にしてください。
対象設備
- 省エネ設備の導入(高効率空調設備、LED照明設備、全熱交換器、高効率ボイラー、高効率変圧器、断熱窓など)
- 運用改善の実践(人感センサー等の導入、照明スイッチの細分化工事など)
補助率・補助額
事前に省エネ診断(クールネット東京が実施する省エネ診断または省エネコンサルティング)を受診し、この提案に基づき、省エネ設備の導入等を行う場合は、補助率が3分の2、補助上限が2,500万円となっています。
なお、事業所全体のCO2排出量の削減見込みが50%以上等の要件を満たす省エネ設備の導入については、補助率が4分の3、補助上限額が5,000万円までとなっています。
その他、事業者が自ら計画を作成し、省エネ効果の確認ができる省エネ設備の導入等を行う場合は、補助率が3分の2、補助上限額が1,000万円までです。
補助対象事業者
「ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業」の対象者は、都内で中小規模事業所を所有または使用している中小企業者等です。
中小規模事業所とは、燃料・熱・電気の使用量を原油に換算した合計の量(原油換算エネルギー使用量)が年間1,500kL未満の事業所等になりますので、参考にしてください。
蓄熱槽等を活用したエネルギーマネジメント推進事業

公式サイト:クール・ネット東京
「蓄熱槽等を活用したエネルギーマネジメント推進事業」は、EMS(エネルギーマネジメントシステム)を導入する際にその費用の一部を支援するための補助金です。
EMSを導入すると、電気やガスの使用量を見える化できたり、エネルギーの使い方を自動で最適化したりすることができます。うまく運用することで、無駄なエネルギー消費を減らし、電気代を節約することが可能になり、幅広いメリットがあるのでビル管理において導入するシーンが増えています。
そんな魅力的なEMSの導入ですが、デメリットとしては導入においてコストがかかることです。しかし、「蓄熱槽等を活用したエネルギーマネジメント推進事業」を活用すれば、導入にかかるコストを抑えることができるため、EMSの導入を検討している事業者にとって特におすすめの補助金となっています。
詳しい補助金の内容は下記にも紹介しているので、参考にしてください。
申請要件
- 都内の事業所にEMSを導入すること
- エネルギーマネジメント計画を策定し、計画に基づきデマンドレスポンスを実施すること
- EMSを導入する事業所の社員等の関係者に対して、DRに関する教育等の普及啓発を実施すること
- DRの取り組み及び普及啓発は、交付後3年間実施し報告することなど
補助対象事業者
- 都内に事業所を所有または使用する事業者等
補助率・補助額
補助上限額は、エネルギーマネジメントの推進の場合、1事業者あたり1,000万円までとなっています。
高度なエネルギーマネジメントの推進(見える化+最適化)の場合、1事業所あたり5,000万円までです。
補助率は企業規模によって異なり、中小規模事業所が3分の2、大規模事業所が2分の1となっています。
補助対象経費
- ソフトウェア・ハードウェアの構築費等
- ソフトウェア・ハードウェアの運用にかかる初期設定費等
- 蓄電池・蓄熱槽の改修費
中小規模事業所のゼロエミッションビル化支援事業

公式サイト:クール・ネット東京
東京都では、建物から出るCO₂の排出量を減らすことが大きな課題となっています。特に、都内のCO₂排出量の約4割はオフィスや工場などの建物から発生しているため、省エネ対策が重要です。
この補助金は、中小規模の事業所が省エネ対策を進めるために、建物の断熱性能を高めたり、省エネ設備を導入したりする際の費用を支援する制度です。省エネ設備とは、電気やガスを無駄なく使えるようにするエアコン・照明・給湯設備などのことを指します。
この補助金を活用することで、事業者は光熱費を削減できるだけでなく、CO₂の排出を減らし、環境にやさしい「ゼロエミッションビル」への移行を進めることができます。中小企業のオフィスや工場を運営する事業者は、この補助金を活用することで、よりエコなビルづくりを目指すことができるため、この機会に申請を検討してみてはいかがでしょうか。
補助対象者
- 中小企業等(中小企業、学校法人、公益財団法人、医療法人、社会福祉法人等)
申請要件
中小企業等が都内で所有または使用する中小規模事業所において、下記の内容を実施することが条件となります。
- ゼロエミビル化設計支援
ゼロエミビル化設計により、BELS認証五つ星(キラ星も含む)を取得すること。
- ゼロエミビル化設備導入支援
ゼロエミビル化設備の導入によって、ZEB Oriented相当の省エネ性能を達成すること。
地球温暖化対策報告書を提出すること。
補助率・補助額
補助額は、事業分類によって異なります。ゼロエミビル化設計支援では、補助率が3分の2までとなっており、補助上限額は1,000万円に設定されています。
2つ目のゼロエミビル化設備導入支援では、補助率が3分の2までとなっており、補助上限額が1億5,000万円までです。
補助対象経費
- 設計費
- 設備費
- 工事費
中小規模事業所向け廃熱有効利用設備導入支援事業

公式サイト:クール・ネット東京
東京都では、二酸化炭素が温室効果ガスの約90%を占めており、その多くがエネルギーの消費によって発生しています。特に、企業や工場などの業務・産業部門からの排出が全体の約半分を占めており、その対策が必要とされています。
この業務・産業部門のCO₂排出のうち、約4割は大規模事業所から発生していますが、残りの6割は東京都内に約63万もある中小規模の事業所から排出されています。そのため、中小規模事業所がエネルギーの使い方を見直し、省エネやCO₂排出削減に取り組むことが重要とされています。
この補助金制度は、東京都が進める「ゼロエミッション東京(2050年までにCO₂排出を実質ゼロにする目標)」の一環として、中小企業や工場が廃熱を有効活用する設備や、省エネ設備を導入する際の費用を支援するものです。この制度を活用することで、企業は設備導入にかかるコストを抑えつつ、光熱費を削減しながら地球温暖化対策にも貢献できるなど、幅広いメリットがありますので、興味がある事業者は申請を検討してみてください。
補助対象者
- 中小企業等(中小企業、学校法人、公益財団法人、医療法人、社会福祉法人等)
補助対象設備
- 事業所や工場等から発生する廃熱等を有効利用するために必要な設備(例:熱交換器、ヒートポンプ、ヒートパイプ、ポンプ、熱導管、蓄熱システム等)
- 廃熱がない又は利用困難な場合、大気熱を抽出するために必要な設備(例:空気熱源ヒートポンプ、循環加温式ヒートポンプ等)
申請要件
- 中小企業等が都内で所有又は使用する中小規模事業所において、助成対象設備を導入すること。
- 助成対象設備を導入することにより、二酸化炭素削減効果が見込まれること。
- 1を実施する事業所について、地球温暖化対策報告書を提出すること。
補助額・補助率
「中小規模事業所向け廃熱有効利用設備導入支援事業」の補助率は、対象経費の3分の2までとなっており、補助上限額は1,000万円までです。
補助金申請の注意点

ここまで、ビルの設備投資に活用できる補助金を紹介しましたが、現在では種類も多く、それぞれの補助金で条件が異なります。そのため、申請の際にはあらかじめ公募要領などを確認し、対象かどうかをチェックしましょう。
また、補助金には申請期限が設けられています。必ず期限を守って申請書の提出をするのはもちろんのこと、期限までに必要書類が届くよう準備することも大切です。
その他、申請について不明点があるという場合には、補助金の専門家に相談することがおすすめです。専門家であれば補助金に関する相談を乗ってくれるだけでなく、申請サポートまで対応しているので、スムーズな申請が可能になります。特に初めて申請をする方は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
まとめ
今回は、ビルの設備投資に使える補助金をまとめて紹介しました。東京都が中心となりましたが、他にも国や地方自治体が行っている補助金が数多くありますので、それらを活用しながらコストを抑えた設備投資を実施しましょう。
ビルドスマートでは補助金を活用した設備投資等を実施しています。申請に関するご相談から申請サポートまで幅広く受け付けていますので、補助金のことで不明な点があれば、ぜひお気軽にご相談ください。