ビルの運用やエネルギー管理において、「ビル中央監視システム(BAS)」と「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」は必要不可欠なツールとなっています。
これらのツールは、一見似ているように感じますが、用途や機能、得られる効果においては明確な違いがあります。
本記事では、実際にビル中央監視システムやエネルギーマネジメントシステムの導入を検討している事業者向けに、それぞれの用途、機能、効果を説明し、両者の違いについても詳しく解説します。
ビル中央監視システムとは

ビル中央監視システムとは、ビル内のさまざまな設備を一元管理・監視するためのシステムです。具体的にはビル内の空調、照明、防災、防犯、電力設備などを効率的に運用する用途で活用されています。
機能や導入して得られる効果については、下記の見出しで紹介しているので参考にしてください。
ビル中央監視システムの機能
ビル中央監視システムの主な機能には、大きく分けて4つあります。
設備の自動制御
ビル中央監視システムは、空調や照明、防犯カメラなどの設備を自動で制御できます。例えば、人がいないエリアの照明をオフにできることや、気温に応じて空調の設定を変更できたりなど、状況に応じた調節が可能になります。
スケジュール管理
スケジュール管理は、ビルの利用状況に合わせて空調や照明の稼働スケジュールを設定できる機能です。スケジュール管理機能があると、営業時間外に発生する無駄なエネルギーの消費を抑えることができるようになります。
異常のリアルタイム監視とアラート通知
設備に異常が発生した場合、ビル中央監視システムはリアルタイムで異常を検知し、担当者にアラートを送信する機能が備えられています。システムが常に監視し、アラートで知らせてくれるため、問題が大きくなる前に対応することが可能になります。
データ収集と管理機能
ビル中央監視システムは、各設備の稼働データを記録・管理する機能が備えられています。データを分析することで、エネルギー使用状況の改善点を見つけたり、設備のメンテナンス計画を立てたりすることが可能です。
導入で得られる効果
ビル中央監視システムを導入することで得られる効果は、大きく分けて下記の2つがあげられます。
建物設備の遠隔操作が可能
ビル中央監視システムを導入することで、空調や照明などの設備を、スマートフォンやタブレット端末を使って遠隔操作することが可能になります。これにより、オフィスにいなくても設備の状況を確認し、必要に応じて調整ができるため、管理者の負担を軽減できます。
離れた場所からでもビル全体を効率的に管理できるのは、ビル中央監視システムのメリットと言えます。
時間とコストが削減できる
ビル中央監視システムは遠隔操作ができることもあり、管理者が現場に行かなくてもさまざまな作業が行えます。例えば、プログラムの設定変更や各機器の動作確認をサーバー経由で実施することが可能です。
さらに、遠隔操作でメンテナンスやトラブル対応を行えるため、現場作業の頻度が減り、結果的にメンテナンスにかかるコストを削減できます。
エネルギーマネジメントシステムとは

エネルギーマネジメントシステムとは、工場やビル、家庭などで使われるエネルギーを効率よく管理し、無駄となる部分を減らすためのシステムです。
エネルギーマネジメントシステムの大きな用途としては、電気やガス、水道といったエネルギーがどのくらい使われているかを監視することです。これによって「どの部分でエネルギーが無駄に使われているか」が簡単に把握できるようになり、瞬時に改善できることでコスト削減などを実現できるようになります。
エネルギーマネジメントシステムの機能
エネルギーマネジメントシステムの主な機能には、下記の3つがあげられます。
エネルギーの一元管理
エネルギーマネジメントシステムには、エネルギーがどこでどれだけ使われているかをグラフや数値で表す機能があります。例えば、どの時間帯に多くの電力を使用しているかが一目でわかるため、改善ポイントも見つけやすくなります。
提案機能
エネルギーマネジメントシステムでは、データをもとにエネルギーを節約するための提案をしてくれる機能があります。例えば、空調の温度設定を変更したり、照明の使い方を調整したりするアイデアを出してくれるため、効率的に運用していくことが可能になります。
レポート作成機能
エネルギーマネジメントシステムには、エネルギー使用状況を自動的にレポートにまとめる機能もあります。レポート作成機能があれば、管理者が一から作成する手間を省くことができるため、業務効率向上にもつながります。
導入で得られる効果
エネルギーマネジメントシステムには、大きく分けると下記2つの効果が得られます。
エネルギーコスト削減
エネルギーマネジメントシステムを導入することで、電気やガス、水道を効率的に管理できるようになります。無駄を減らすことで電気代やガス代を節約できるようになるのが大きなメリットと言えます。
近年、燃料の高騰が続いているため、できる限り抑える方法としてエネルギーマネジメントシステムを導入する企業も少なくありません。
CO₂削減
エネルギーの無駄を減らすことで、地球温暖化の原因となるCO₂の排出量を減らすことができます。エネルギーマネジメントシステムは、エネルギーを効率的に使用するための運用をしてくれるため、コストの削減はもちろんのこと、地球にやさしい取り組みもサポートしてくれるなど幅広い効果が得られます。
ビル中央監視システムとエネルギーマネジメントシステムの違い
ここまでビル中央監視システムとエネルギーマネジメントシステムについて紹介しましたが、両者のどちらを導入しようか検討している方向けに、この見出しでは違いについて紹介します。大きく分けると両者の違いは2つありますので参考にしてください。
目的の違い
ビル中央監視システムの主な目的は、ビル内の設備(空調、照明、防犯、防災など)の状態を監視し、効率的に運用することです。
一方、エネルギーマネジメントシステムの目的は、建物全体で使われるエネルギー(電力、ガス、水道など)の消費を最適化し、無駄となる部分を減らすことです。
このように、両者は目的が異なるため、用途や活用の場面も変わります。そのため、ビル運用のニーズに合わせて適切なツールを選択することが大切となります。
対象の違い
ビル中央監視システムとエネルギーマネジメントシステムは、対象が異なります。
ビル中央監視システムは、ビル内にある空調、照明、エレベーター、防犯カメラ、防災設備など、個々の設備やシステムを対象としています。
一方、エネルギーマネジメントシステムは、個別の設備ではなく、ビル全体で使用されるエネルギーを対象としています。電力やガス、水道などすべてのエネルギー消費を一元管理し、分析することでエネルギー全体の削減を目指すためのツールとなっています。
このように、両者は対象の違いがあるため、空調や照明、防犯カメラなどの個別設備やシステムを対象としている場合にはビル中央監視システムを、ビル全体のエネルギー管理をしたい場合はエネルギーマネジメントシステムを選択しましょう。
各ツールはどのような状況や事業に適している?

ビル中央監視システムとエネルギーマネジメントシステムは、それぞれ目的や対象による違いがありますが、どのような状況や事業に適していると言えるでしょうか。この見出しではそれぞれが適している状況や事業について紹介しているので、どちらを導入すべきか悩んでいる事業者はぜひ参考にしてください。
ビル中央監視システムが適しているケース
ビル中央監視システムは、大規模ビルや商業施設のように、多くの設備が稼働している環境での活用がおすすめです。空調や照明、防災・防犯設備などを一元的に監視・制御できるため、システムで全てを管理すると効率化が図れます。
また、病院やホテルのような施設では高い安全性が求められますが、中央監視システムなら異常を検知して通知する機能があるので、安全性が求められる施設での運用にもビル中央監視システムが適していると言えるでしょう。
エネルギーマネジメントシステムが適しているケース
エネルギーマネジメントシステムは、工場や倉庫のようにエネルギー消費量が多い施設や、環境負荷削減が課題となる自治体・企業に適していると言えます。
また、電力やガスについては近年、値上がり幅が大きくなっているため、コストをできる限り抑えるための対策をしたい企業にとってもおすすめです。
その他にも、CO₂削減が求められる事業では、エネルギーマネジメントシステムを導入することで対策が可能になるため、環境を考えた取り組みを実施している企業にとってもおすすめと言えます。
両システムの併用が適しているケース
複雑な設備構成を持つスマートビルや、大規模施設ではビル中央監視システムとエネルギーマネジメントシステムの併用が効果的です。
両者を導入することで設備の効率的な運用と、エネルギーの最適化を組み合わせることが可能になるので、快適性や安全性を保ちながらコスト削減と環境負荷軽減の両方を実現することが可能です。
まとめ
今回は、ビル中央監視システムとエネルギーマネジメントシステムについて詳しく解説しました。それぞれ違いがあるので、導入の際には違いを把握し、自社に最適なシステムを導入しましょう。
ビルドスマートでは、補助金を活用したビル中央監視システムやエネルギーマネジメントシステムの導入支援を実施しています。
補助金を活用することで通常よりも安く導入が可能となっておりますので、申請を検討されている事業者様は、ぜひお気軽にご相談ください。