エネルギーマネジメントシステムの種類とは

近年、電気やガスの料金の値上がりが続いており、以前よりも上がりすぎていると感じている方は多いのではないでしょうか。値上がりの原因は、液化天然ガスや原油の価格が上がったり、円安が続いたりしていることが影響しており、企業では経営が圧迫しないよう幅広い対策を行っています。

その中でも電気や燃料をできる限り抑えるために、エネルギーの使用状況を把握し、管理する作業を実施している企業も多いですが、これらを細かく管理するのは大変な作業です。

そこで現在注目されているのが、エネルギーの管理や無駄を減らすために役立つ「エネルギーマネジメントシステム」です。手間を大幅に減らせるシステムとして多くの企業が導入を検討していますが、導入にあたってどのような種類や機能があるのかよくわからないと悩んでいる方も多いでしょう。

本記事では、自社に最適なエネルギーマネジメントシステムを導入するために、概要から種類、どのような場面で役立つかなど詳しく解説します。

エネルギーマネジメントシステムとは?

エネルギーマネジメントシステム

エネルギーマネジメントシステムとは、建物や施設で使用する電気やガスなどのエネルギーを効率的に管理し、無駄となる部分を減らすためのツールです。

具体的にエネルギーマネジメントシステムを使えば、工場、ホテル、病院、オフィスビルなどで使われるエネルギーをモニタリングし、グラフやデータで「どれだけ使っているのか」を一目で確認することができるようになります。

このような作業を全て手作業で行うのは現実的ではありませんが、エネルギーマネジメントシステムならデータとして自動的に表示してくれるため、手間なく管理ができるようになり、結果的にエネルギーコストの削減につなげられます。

ここまでエネルギーマネジメントシステムの簡単な概要について紹介しましたが、実際には幅広い種類が存在しています。それぞれの種類の概要や何に役立つのか、機能なども知ることで自社に最適なエネルギーマネジメントシステムが導入できるので、もっと詳しく知りたい方は次の見出しも参考にしてください。

エネルギーマネジメントシステムの種類

エネルギーマネジメント 種類

エネルギーマネジメントシステムの種類は、大きく分けると下記の5つに分けられています。

  • FEMS
  • BEMS
  • HEMS
  • MEMS
  • CEMS

この見出しでは、それぞれのシステムの概要から、主な機能、役立つ場面について紹介しているので参考にしてください。

FEMS

FEMS(Factory Energy Management System)とは、工場のエネルギー管理を専門としているシステムのことです。工場では、主に機械や設備によって大量のエネルギーを消費します。規模によっては大量の機械や設備を管理しなければなりませんが、FEMSならエネルギーの使い方を適切に管理することができ、生産コストを最小限に抑えることが可能になります。

主な機能

FEMSの主な機能として、下記にリスト形式で紹介しています。工場に特化した内容となっているので、製造業などで導入を検討している方は参考にしてください。

  • 各設備や生産ラインごとのエネルギー使用状況をモニタリング。
  • 電力消費のピークタイムを分析し、負荷を分散。
  • 過剰なエネルギー使用を抑えるための警告アラート。
  • 再生可能エネルギーの活用状況を可視化など。

FEMSが役立つ場面

工場では、FEMSを活用することで、どの機械や設備に多くのエネルギーが使われているかわかるようになります。

例えば、稼働していない機械が動いている場合、それらを止めることで無駄な電力を使わずに済みます。また、エアコンや照明を必要な生産ラインにだけ使うように設定することもできるため、これまで以上に電気代を減らすことができるでしょう。

このように、工場全体のエネルギー管理を実施したいと考えているなら、FEMSの導入がおすすめと言えるでしょう。

BEMS

BEMS(Building Energy Management System)とは、オフィスビルや商業施設に特化したエネルギーマネジメントシステムです。具体的には空調や照明、エレベーターなど、ビルで消費される電気やガス、水道を効率的に利用するためのシステムとなっています。

主な機能

BEMSは、ビルのエネルギーマネジメントに必要不可欠となる機能が揃っています。下記に主な機能について紹介しているので、そちらも参考にしてください。

  • 各フロアやエリアごとのエネルギー使用量をリアルタイムで把握。
  • 空調や照明の自動調整(天候や利用状況に応じて温度や明るさを最適化)。
  • 運用データをもとにエネルギーコストを削減する提案。
  • 人感センサーやタイマー機能を活用して、無人エリアの消費を削減。

BEMSが役立つ場面

BEMSは、ビルに特化したエネルギーマネジメントとなるため、ビルの管理者にとって欠かすことができないシステムとなっています。

例えば、BEMSならエアコンや照明が無人の部屋でもつけっぱなしになっている場合、それに気づいて管理者に知らせる機能があります。瞬時に知らせてくれることで無駄を減らせるため、コスト削減に貢献してくれます。

また、天気や時間によってエアコンの設定温度を自動で変えたり、昼間は太陽の光を活かして電気を減らしたりすることも可能なので、管理者の負担を抑える面でもメリットが多いと言えます。

HEMS

HEMS(Home Energy Management System)は、家庭のエネルギー使用を管理するためのシステムです。多くのシステムでは事業者向けとなっていますが、HEMSに関しては一般住宅のエネルギー管理を目的としています。

具体的な内容としては、スマートフォンやタブレットを使って、家電や設備の電力消費をリアルタイムで確認し、効率的な使用をサポートするシステムとなっています。近年、一般家庭でも電気料金やガス料金の値上がりが進んでいるため、コストを抑える目的として導入する家庭もあります。

主な機能

HEMSの主な機能としては、下記のリストに当てはまる内容となっています。

  • 家庭全体の電力消費をリアルタイムでモニタリング。
  • 電気料金が高い時間帯を教えてくれる機能。
  • 家電の遠隔操作(外出先からエアコンをオフにする)。
  • 再生可能エネルギー(太陽光発電)の利用状況の表示。

HEMSが役立つ場面

HEMSが役立つ場面は、主に家庭内で使う電気やガスの無駄をなくしたいケースです。例えば、導入することで家の中でどの家電がどのくらい電気を消費しているかをスマホや画面で確認できます。HEMSが使用量の多い家電を瞬時に知らせてくれるので、節約につなげることができるでしょう。

また、太陽光発電で作ったエネルギーの使い道がよくわからないというケースでも、効率よく使う方法をHEMSなら知らせてくれるため、使い道で悩むこともありません。これらのことから、一般家庭でエネルギーマネジメントを行いたいと考えているならHEMSがおすすめと言えます。

MEMS

MEMS(Multiple Energy Management System)は、HEMSと同じと思っている方もいますが、これはマンション向けのエネルギーマネジメントシステムとなっています。マンションの管理者向けとなっており、住戸ごとのエネルギー消費だけでなく、共用部(廊下やエレベーターなど)の消費も一括して管理できるのがMEMSです。

また、マンション管理者はBEMSとも悩むケースがあるかと思いますが、マンションの管理に特化したエネルギーマネジメントならMEMSを選択することで失敗を防ぐことができます。

主な機能

MEMSでは、マンションに特化した機能が幅広く搭載されています。具体的には下記リストの内容が主な機能となりますので参考にしてください。

  • 各住戸の電力消費量を住民が確認できる仕組み。
  • 共用部(廊下やロビー)の電気や空調の効率的な運用。
  • 太陽光発電や蓄電池の利用状況を可視化。
  • 住民への省エネアドバイスを提供。

MEMSが役立つ場面

MEMSは、オフィスなどのビルや施設ではなく、マンションでの効果を発揮するエネルギーマネジメントシステムです。具体的にはマンションの共用スペースで使う電力を管理し、必要がないときに照明やエアコンを自動的に調節することができます。

また、マンションに太陽光発電や蓄電池がある場合には、それらのエネルギーを無駄なく活用できるよう提案も行ってくれます。

特にマンションの共用スペースの電力消費が多いと感じている管理者は、MEMSを導入することで悩みを解決することができるでしょう。

CEMS

CEMS(Community Energy Management System)は、地域全体や工業団地におけるエネルギー管理を目的としているシステムのことです。エネルギー管理の範囲は広いのが特徴であり、範囲内にある企業のみならず、一般家庭においてもエネルギーマネジメントの範囲となるのがCEMSの特徴となっています。

これらのことから、CEMSは消費する側の立場でエネルギーを管理するのではなく、供給する側でマネジメントを行うシステムとなっています。

主な機能

CEMSの主な機能については、地域全体を管理できるものに特化しています。詳しい内容は下記にまとめていますので参考にしてください。

  • 地域全体の電力消費をリアルタイムで監視。
  • 再生可能エネルギー(太陽光、風力など)の活用を最適化。
  • 地域内で余ったエネルギーを共有し、ロスを削減。
  • 災害時におけるエネルギー供給の安定化。

CEMSが役立つ場面

CEMSは、町全体や地域でエネルギーを効率よく使うためのシステムです。たとえば、地域で作った太陽光や風力発電の電力を、必要な場所に分けたり、余った電力を他の施設や家庭に送ったりできます。

また、地域全体で電気の使いすぎが起きないように調整したり、停電が起きたときに一部のエリアに電力を優先して届けたりすることも可能になります。

このようにCEMSは、エネルギーを管理するまとめ役のようなシステムなので、自治体や企業の導入がおすすめのエネルギーマネジメントシステムとなっています。

まとめ

今回は、エネルギーマネジメントシステムの種類について、概要から機能、役割について詳しく紹介しました。それぞれ特化している内容が異なりますので、導入の際には自社に最適なエネルギーマネジメントシステムを選択するようにしましょう。


ビルドスマートでは、補助金を活用したエネルギーマネジメントシステムの導入支援を実施しています。補助金を使用することで安く導入することが可能になるので、できる限りコストを抑えた方法で導入したいという事業者様は、ぜひお気軽にご相談ください。