現在、人手不足を抱えている業界は非常に多いです。人手不足によって事業継続の断念に追い込まれるケースは深刻化しており、2024年に従業員の退職や採用難、人件費の高騰などが原因で倒産に追い込まれた企業は累計で342件にも上ります。人手不足が発生すると、業務の遅延やサービス品質の低下など、顧客にさまざまな影響を与えるため、経営を継続することが難しくなります。
人手不足の問題はビルメンテナンス業界も例外ではありません。実際に、ビルメンテナンス業界では現在抱えている課題に人手不足を挙げる企業も多く、早急に解決しなければならないところも少なくないでしょう。しかし、解決しなければならないことを理解していてもビルメンテナンスを行う企業の中には、どのように人手不足を解消すればいいのかわからないという方もいるのではないでしょうか?
そこで、今回はビルメンテナンスの概要や主な業務、現在ビルメンテナンス業界が抱えている課題や人手不足などを解決する方法について解説しますので、ぜひ参考にしてください。
ビルメンテナンスとは?

ビルメンテナンスとは、オフィスやビル、商業施設、マンション、ホテル、病院などの建物を維持管理する業務のことです。簡単にいえば、ビルの中で働いている方や暮らしている人が快適に利用できるように衛生面や設備面などの保守管理を行います。ビルメンテナンスを適切に行うことで、利用者が満足して利用し続けるだけでなく、ビルの資産価値を守ることにもつながるため、ビルを所有する人にとっても重要な業務です。
元々、ビルメンテナンス業界は、日本のバブル期の好景気の影響で1990年代まで安定して成長し続けた業界です。その後、都市部の再開発事業の需要増加やリーマンショックによって成長率は増大・減少を繰り返しましたが、2009年からは再び右肩上がりに上昇し、今後も成長が期待される業界となります。
ビルメンテナンスの主な業務について

ビルメンテナンスの主な業務は、大まかにわけて5つあります。どのような業務があるのかそれぞれ詳しく解説していきますので、ぜひチェックしてみてください。
清掃管理業務
清掃管理業務は、床面や壁面、扉、什器・備品などに気を配り、各部屋の特性に沿ってバランスのとれた美観や衛星を維持するための業務です。もちろん、それぞれのビルで用途は異なりますが、清掃管理業務に関してもそれに合わせて管理内容が変化します。また、ビルの床材や壁材などはさまざまな素材が使用されており、清掃管理業務ではこれらの特性に合わせて清掃管理を行わなければなりません。
近年の清掃管理業務では、汚れたものを清掃するという形ではなく、汚れる前に処置して常に綺麗な状態に保つ方法が採用されています。感染症対策に関してもビル内の殺菌も重要な業務になりますが、菌を外から持ち込ませない取り組みも行われているケースが多いです。
衛生管理業務
衛生管理業務は、人工的空間であるビル内環境を衛生的に保つ業務を意味します。基本的には、建築物衛生法の環境基準がしっかりと守られているか測定したり、点検したりして基準に合致するように調整する業務です。
衛生管理業務は、空気環境や飲料水、排水などの測定や検査を行います。空気環境については、浮遊粉塵や温度、相対湿度など衛生管理に必要な項目に沿って点検します。また、飲料水においては残留塩素の測定と貯水槽の清掃や給水管の洗浄、排水に関しては排水設備の定期点検等を行います。
設備管理業務
設備管理業務は、ビル内に設置されている設備機器の運転や監視、点検、整備・保全等を行う業務です。現在多くのビルでは、設備機器はコンピューターによって管理されており、自動的にコントロールされているため、監視に関しては中央監視盤で行われています。
各種ビル設備を運転するためには、法定資格が必要です。また、現在は設備がシステム化されているため、設備機器全体に知識を持ち、有機的連関をコントロールできる技能も求められています。
建物・設備保全業務
建物・設備保全業務は、ビル保全のための管理及び管理のための保全を行う業務です。簡単にいえば、建物全体の安全を考える業務になります。受変電・発電機器の設備やボイラー設備・冷凍機設備の保守や法定点検、建物の空気環境測定や飲料水貯水槽の清掃、水質検査などを行います。
警備防災業務
警備防災業務は、ビルの安全を守るための業務です。ビルには、警備員が配置されてその人たちが日常的に防犯や防火業務に充実していますが、それが警備防災業務となります。
近年においては、警備防災業務に関してもシステム化が進んでいます。そのため、巡回業務だけでなく、防災センターにおける防災監視装置の監視や制御、それに基づく異常事態への緊急対応業務が重要となっています。
ビルメンテナンス業界が抱える課題

このように、ビルメンテナンス業務は多岐に渡りますが、現在ビルメンテナンス業界では数多くの課題を抱えています。具体的に、どのような課題を抱えているのか詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
作業員の高齢化
ビルメンテナンス業界に限った話ではありませんが、作業員の高齢化が課題となっています。
『ビルメンテナンス情報年鑑2023』によれば、一般清掃業務でもっとも多い年齢層は60歳以上となっており、その割合は46.7%にも上ります。これは、半数近くが60歳であることを示しているデータです。
また、設備管理業務では、60歳以上が28.9%となっていますが、40~59歳が45.4%となっており、高齢化傾向にあることがわかります。一般清掃業務や設備管理業務、警備業務以外の業務でも40~59歳が45.6%を占めており、多くの業務で作業員の高齢化が深刻な課題となっているといえるでしょう。
人手不足
ビルメンテナンス業界においても人手不足を深刻な課題として挙げている企業は非常に多いです。
株式会社帝国バンクが2024年10月に実施した『人手不足に対する企業の動向調査』によるとメンテナンス・警備・検査の人手不足の割合は69.7%です。2023年10月の調査では68.4%、2022年10月の調査では62.4%となっており、年々増加傾向にあることがわかります。また、メンテナンス・設備・検査の正社員の人手不足の割合は、情報サービスに次いで2位となっており、人手不足の課題が非常に深刻となっていることが理解できるでしょう。
コスト高騰による経営圧迫
ビルメンテナンス業界では、コスト高騰によって経営が圧迫している企業も少なくありません。
現在、新型コロナウイルスの影響は落ち着いたものの、過度な円安や原材料の高騰によってあらゆるところでコストが増大しています。また、現在は物価高により賃上げ気運が非常に高まっており、人件費の負担が大きな課題となっているところも少なくありません。
価格競争の激化
価格競争が激化している点も課題として挙げるところは多いです。
現在、円安や原材料の高騰、賃上げ気運の高まりによる人件費の高騰などによってさまざまなコストが上がり、経営を圧迫している一方、オーナーに対して契約料金の交渉が難しくなっているという悩みを抱えている企業も増加傾向にあります。ビルオーナーによる競争入札が採用されるケースでは、特に受注を獲得するために価格競争が激化しており、契約金額が上げられなかったり、逆に提示した金額が原因で採用されなかったりするケースもあります。
当然、ほかの企業が低い価格を提示すれば、そちらの企業が採用されることになるため、契約金額を引き上げられない企業も珍しくありません。
ビルメンテナンス業界が抱える人手不足の解決策はITツールの導入が有効

ビルメンテナンス業界では、人手不足の課題を抱えているところが非常に多いですが、その解決策として有効なのがITツールの導入です。ここでは、なぜITツールを導入することで人手不足が解消されるのか解説しますので、早速チェックしていきましょう。
業務の自動化と効率化
ITツールを導入することで、これまで人の手で行っていた業務を自動化・効率化することができます。これにより、業務に必要な人材の数が減るため、人手不足解消につながります。具体的には、スマート清掃ロボットの運用やIoTセンサーによる設備状況の監視などが挙げられるでしょう。
ビル内の状況をリアルタイムに把握
ITツールを導入することで、ビル内の状況をリアルタイムに把握することが可能です。例えば、モニタリングシステムが漏水や電力異常が発生した際に通知で知らせてくれるため、従業員が現場を巡回する必要がありません。ITツールを利用すれば、人員の必要性を最小限に抑えられるので、ITツールで人手不足を解消することができるでしょう。
迅速な情報共有を実現
ITツールを導入すれば、作業報告や情報共有を素早く行うことができるようになります。これにより、無駄な工数が削減されるため、業務効率化を実現することが可能です。
また、クラウド型のITツールを利用すれば、進捗や作業内容を一元管理し、現場間でスムーズに連携することができます。さらに、業務プロセスを標準化できるため、新人や未経験者も効率的に業務を進めることが可能です。これにより、技能が十分ではない人材も採用できるようになるため、人材不足解消につなげられます。
まとめ
今回は、ビルメンテナンスの主な業務や抱えている課題、その課題を解決する方法について詳しく解説しました。ビルメンテナンス業界で特に深刻化している課題は人手不足です。しかし、ITツールをうまく活用することで、その課題にも対応していくことができます。
実際に、人手不足を解消するために、ITツールの導入を検討している人も多いのではないでしょうか?そのような企業は、ビルドスマートを利用して導入するのがおすすめです。
ビルドスマートは補助金を活用してビルメンテナンスに必要なITツールの導入支援を実施しています。通常よりも安い価格で導入することができるので、興味がある方は、下記のURLからお気軽にご相談ください。