EMS(エネルギーマネジメントシステム)の導入率は?デメリットとあわせて紹介

EMSは、電力や燃料などのさまざまなエネルギーが、「いつ、どこで、どのくらい」消費されているかを把握するために欠かすことができないITシステムです。

画期的なシステムであり、企業や工場、施設における導入率は増加傾向にあるものの、急速に普及が進んでいるとは言えない状況です。

本記事では、具体的にEMSの導入率はどのくらいあるのかについて紹介し、普及が進まない理由や、EMSの導入で感じるデメリットの部分を解消する方法まで紹介しています。

特にEMSの導入を検討している企業にとっておすすめの内容となっているので、ぜひ参考にしてください。

EMSとは

EMS とは

エネルギーマネジメントシステムは、建物や工場などのエネルギー使用状況を総合的に把握し、効率的な運用を実現するためのシステムです。

このシステムは、エネルギーの消費データを収集・分析することで無駄を削減し、運用を最適にしていくことを目的としています。

実際に導入をすることで、各設備の稼働状況を年、月、日、時間別に把握することが可能になり、どの設備を運用改善または投資改善すべきかを簡単に判断できるようになります。

瞬時に改善することができれば、導入していなかった時に比べてコスト削減が見込めるため、あらゆる施設で導入が進んでいます。

EMSの重要性

EMSは、エネルギー使用状況を「見える化」することで、運用改善や効率的な投資判断を支援し、ランニングコストを削減する役割を担っています。しかし、それだけではなく、EMSは企業の競争力を高めるうえでも重要なシステムです。

現在、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の目標を掲げています。この目標を達成するため、企業には脱炭素社会に向けた具体的な取り組みが求められています。

特に、大企業ではすでに取引先(スコープ3)に対して、CO2削減に関する目標や具体策の提示を要求するケースが増えています。そのため、環境負荷を軽減するための対策を講じない企業は、取引先や投資家などのステークホルダーからの評価を下げるリスクもあるのです。

しかし、EMSを導入することで、エネルギー管理を効率化し、削減されたエネルギー使用量やCO2排出量を具体的な数値として示すことが可能になります。これにより、「カーボンニュートラル」に向けた取り組みとして評価されるようになり、他社との差別化や競争力の向上にもつなげられるのです。

こういった面でもEMSは重要なシステムの一つであり、導入にはさまざまなメリットがあります。

EMSの導入率の現状

EMS 導入率

ここまではEMSの概要から導入の重要性について紹介しました。EMSは導入をすることで幅広いメリットを得られますが、現状として、導入率は急速に普及しているとは言えない状況となっています。

株式会社富士経済が2024年1月に発表した調査レポート「エネルギーマネジメント・パワーシステム関連市場実態総調査 2024」によれば、EMS関連市場は今後、製造業を中心とした脱炭素対策の推進や半導体関連工場の新設・増強、サプライチェーンにおけるCO2の総排出量(Scope3)の把握ニーズが高まったことなど、複数の要因によって市場拡大が期待されており、その規模は2035年度には2兆6887億円に達すると予測されています。

参照元:https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=24014&la=ja

このように、EMSの導入率は公開されている情報が限られているので詳細な数値を示すことは難しい状況となっていますが、将来的には増えることが予想されているものの、現状の導入率はそこまで多くはありません。

その理由には導入のハードルが高いとされるさまざまなデメリットがあるとされています。次の見出しでは具体的にEMSの導入に関係するさまざまなデメリットを紹介しているので、そちらをご覧ください。

EMS導入における主なデメリット

EMS導入 デメリット

EMSの市場は拡大傾向にあるものの、導入率の急速な上昇が見られない背景には下記のデメリットが影響していると考えられます。

初期費用の高さ

EMSを導入する際の大きなハードルの一つは、初期費用の高さです。EMSの導入には、エネルギー使用データを収集・分析するための専用システムやセンサー機器の設置、さらにそれらを管理・運用するためのソフトウェアライセンス費用が必要です。また、これに加えて、導入計画の策定やシステムの設定を行う専門家へ依頼する際のコストが発生する場合もあります。

特にエネルギー消費が多い大規模な施設や工場では、導入コストが膨らみ、システム構築に数百万円から場合によっては数千万円規模の投資が必要となるケースもあるのです。

また、既存設備の改修が必要な場合や、導入後の運用に向けた人材教育などの間接的なコストにも考慮する必要があるので、全てを合わせると資金力がない企業にとっては導入のハードルが高すぎると感じてしまいます。

このように初期費用の高さがEMSの導入が進んでいない理由の一つとも言われていますが、同じ性能のEMSで初期費用を抑える方法としては後述する2つの方法がありますので、コストがネックとなっている企業はそちらも参考にしてください。

運用の複雑さ

次にEMSを導入する際のデメリットは、運用の複雑さが課題としてあげられることです。

EMSはエネルギー使用状況を見える化し、無駄を削減するための画期的なツールとなりますが、取得したデータを効果的に活用するには専門的な知識が必要不可欠です。

例えば、エネルギー消費の分析や改善施策の立案、機器の最適な運用方法の設定など、システムの活用には深い知識が必要となるのです。そのため、導入する企業はEMSを運用できる人材を確保するか、既存の社員を教育する必要が出てくるのです。

資金力がある企業や人材の確保に困っていない企業にとっては問題ない話となりますが、中小企業では、専門知識を持つ人材が限られていることが多いですし、人材の確保や教育にもコストがかかってしまいます。

これらの理由から、EMSを導入する際には、運用体制を事前に整備することが重要であり、そのハードルが高いため、導入が進んでいない理由の一つとも言えます。

ランニングコストもかかる

最後にデメリットと感じられる部分としては、ランニングコストがかかることです。

EMSは初期費用の高さがデメリットとしてあげられますが、その他にシステムの運用や維持のために支払うコストも必要となります。

具体的にはクラウドベースのシステムでは月額または年額の利用料が必要で、長期間にわたり継続的な支出が求められます。また、システムの保守・メンテナンス費用や、定期的なソフトウェアのアップデート、ハードウェアの交換費用にもランニングコストが含まれるケースがあります。

その他にもデータ分析や運用を担うスタッフの人件費等、特に中小企業にとってはこれらのコストが経営を圧迫する要因となりかねません。

このように、初期費用の高さだけではなく、ランニングコストが継続的に発生する点においても、導入を躊躇してしまう理由の一つと言えそうです。

EMS の初期費用を抑えられる2つの方法

EMSは初期費用が高いことがデメリットとしてあげられますが、その負担を抑える方法としてあげられるのが補助金の活用です。

現在公募が行われている補助金の中でも、特におすすめなのが「IT導入補助金」と「デコ活のエネマネ推進事業」です。これらの補助金はEMSの導入にも活用することができるため、できる限り初期費用を抑えたいと考えている企業にとっては活用がおすすめです。

下記ではそれぞれの補助金の特徴についても解説しているので、参考にしてください。

IT導入補助金

IT導入補助金

EMSの導入に際し、初期費用の負担を軽減する有効な手段として、IT導入補助金の活用があげられます。IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際の経費の一部を支援する制度で、EMSの導入にも活用することができます。

具体的な補助内容としては下記の内容があげられるので、参考にしてください。

【補助率】:通常枠では、導入費用の1/2以内が補助対象です。

【補助額】:導入するソフトウェアの機能数に応じて、補助上限額が設定されています。例えば、1機能以上の場合は5万円~150万円未満、4機能以上の場合は150万円~450万円以下が補助対象となります。

上記が簡単な補助内容となりますが、IT導入補助金は、ITツールの導入にもっとも活用されている補助金であり、比較的利用しやすいものとなっているので、EMSの初期費用を抑えたいと考えている企業は、ぜひ活用を検討してください。

デコ活のエネマネ推進事業

デコ活のエネマネ推進事業

デコ活のエネマネ推進事業は、東京都が公募を実施している支援制度の一つで、主にEMSの導入にかかる費用の一部を補助してくれます。

EMSに特化した補助金とあって、補助額の規模も大きめに設定されています。詳しくは下記で紹介しているので、そちらを参考にしてください。

【補助率】:中小企業2/3、大企業1/2

【補助額】:1事業所あたり1,000~上限5,000万円(企業規模や要件によっても異なるので、詳しく公募要領をチェックしてください。)

上記のようにIT導入補助金と比べても規模が大きなものとなっているので、東京都の企業でEMSの初期費用を抑えたいと考えている場合は、ぜひ活用を検討してください。

まとめ

EMSを導入することでエネルギーコストを抑えることができたり、運用・管理を効率よく行えたりなど幅広いメリットがありますが、初期費用やランニングコストなどがデメリットとしてあげられます。

対策方法はいくつかありますが、その中でもIT導入補助金やデコ活のエネマネ推進事業は、導入にかかるコストの50%以上を補助してくれる制度となるため、大幅に初期費用を抑えられます。補助金は公募が終了次第、申請ができなくなるので、コストを抑えたいと考えている企業様は、ぜひこの機会にご活用ください。

当サイトでは、EMSの導入に関するご相談から、補助金申請のサポートまでトータルで実施しています。特に補助金を活用したいけど、申請が複雑で何から始めたらいいかわからないといった悩みも一括で解決できるので、補助金の利用を検討している企業様は、お気軽にご相談ください。